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2017-11-14

【なぜ、フリーペーパーなの?】#6 TOKYO VOICE

「人の声で、明日は変わる。」をコンセプトに、今年の7月に創刊されたばかりのフリーマガジン『TOKYO VOICE』。普段聞くことのできない人々の心の声を引き出している、パワーの詰まったフリーマガジンです。今回は企画発行人の森口康成さんにお話を伺いました。

— デジタル化されている時代で、なぜフリーペーパーを出しているのかお尋ねしたいです。

森口:インターネット普及から20年、スマホが普及して10年。デジタル化がどんどん進んでいるんですが、ミレニアルズ世代にいろいろ聞いてみると、現実はすべてがデジタルに向かっているのではないこともわかります。スマホが流行れば流行るほど一眼レフのカメラとかミラーレスといった本格的なカメラを欲しがったり、スケジューリングなんかは全部パソコンやスマホで出来るのに、LOFTや東急ハンズで手帳がやたら売れて書き込むことに喜びを見出していたり、若い女の子が部屋に一人でいる時間にラジオを聴くという現象が起こっている。そういう現象を受けた時に、デジタル・アナログと分けているのは、僕らが勝手に言っているだけで、若い世代は関係なくて、むしろデジタル化が進めば進むほど、そういうアナログの良さというのを感じてきているんじゃないかと。
フリーペーパー=アナログという言い方が正しいのかわからないけど、この大きさとか手触り、紙質を含めてこだわったのは、そういうデジタルとアナログの間に居場所のある人たちに届けたいからという想いからです。

“見た裏側に人間味を感じる人たちとか、ベタだけど一生懸命生きている人たちだったり、悩んでいる人たちだったり、そういうリアルな人たちの声を伝えたい”

— 紙面に出てくる人はどのように選んでいるのですか。

森口:編集部メンバーやブレーン、みんなで議論しながらですね。ただ、タレントさんがPR的に「映画に出ました」とか「新しいドラマ出ます」からと出ても、今や読者は見抜くというか、わかるじゃないですか。そういうことはしたくないので、裏側に人間味を感じる人とか、ベタだけど一生懸命生きている人だったり、悩んでいる人だったり、そういうリアルな人たちの声を伝えたいので、深みのある人たちという選択には気をつけています。
もう一つは、一般人も有名人も全く関係なく同じように扱うというのが『TOKYO VOICE』のルール。例えば偉い方が出てきて「なんで俺が表紙じゃないんだ」とか「名前をドンって入れないんだ」ということに関しては、『TOKYO VOICE』はそういう雑誌ではないということをお伝えしています。

— 有料でもおかしくないクオリティでなぜ、あえて無料にしているのか理由を伺いたいです。

森口:今、雑誌の世界を見たときに、あまりにも物の情報が溢れていて、それが、僕自身、楽しくなくなっちゃって。本当はみんな興味があるのは、人なんじゃないかなというところから、『TOKYO VOICE』を創りたいと。これを販売という形にしたときには基本、本屋さんを通さなければならない。本屋さんを否定する気は無いんですが、できるだけ『TOKYO VOICE』を若い世代に伝えたいと思ったときに、若い人たちと本屋の距離が離れている気がして。実際、日本全国で本屋がめちゃくちゃ減っていて、市町村単位でも本屋が一軒もないところが増えてきていて。そこで僕らが本屋の壁を越えるために考えたのが、カフェやショップで配布するフリーマガジンにしようという企画。そこで大事なことが、フリーということ。『TOKYO VOICE』は、多くの人に、リアルな声を伝えたいという想いの企画なので素敵な人たちの声を、世の中にお伝えするという役割をしているだけ。そこに高額のお金をつけるというのはおかしい話かなと思ったのでフリーにしています。そのうえで、このクオリティでフリー?タダなの?という驚きのレベルは、我々なりの挑戦として仕掛けています。

— やはり編集の過程でどうしても都合をつけなくてはいけないことも多くて、リアルな生の声を反映させるのって難しいなと思うのですが。

森口:そうですね。我々もそういう仕事をしてきているので否定はしないのですが、やはりネットなどの記事にはライターがいて、(作って)書いているような文章が多くて。それを読むのが楽しいのかどうかというところですよね。僕はライターが書いてるやつだと、正直5ページくらいあるものは頭と終わりだけ読む。長いと面倒くさくなっちゃうから(笑)。でも『TOKYO VOICE』は一行でもその人の声なので。その人に興味が湧けば全部読めると思っていますね。ただ、「人の声」であるインタビューのどこを切りとるかは、簡単ではない。かなり難しい。そこに関してはものすごく熟考しています。それがプロの仕事ですし、クオリティというところに出ているのかなと思います。

“幸せと生きがいも人によって違って、幸せのモノサシが多様化した。いろいろな幸せにものさしがあって、それを主張してもいい時代になったんだと思います”

— 読者に伝えたいメッセージはなんですか。

森口:ここ(フリーペーパー右上)に書いてあるように、「人の声で、明日は変わる。」という創刊からのコンセプトの言葉を信じています。
あと、僕が一番思っていることは創刊号の裏表紙に書いたんですけど、僕らの時代、昭和の時代って、みんな学生時代は学ランやセーラー服を着て、結婚する時には結納して披露宴をあげて、就職はみんな、一つの会社に一生勤めて、それで家でも買えたらとても幸せだ。そんな日本人の幸せの方程式が、割とみんな同じ方向、モノサシだったんですよ。
でも、今の若い世代は子どもの頃からネットで日本中・世界中の声が届いていた時代。その中で気づいたことがこれ(裏表紙のメッセージ)で、「幸せって人によって違うし。正解もない」。例えば会社に就職するのが幸せな人もいれば、自由にいろんな仕事についてみるのが幸せな人もいて。幸せと生きがいも人によって違って、幸せのモノサシが多様化した。いろいろな幸せにものさしがあって、それを主張してもいい時代になったんだと思います。
だからいろんな人の声を聞いて、この人に共感して頑張ってみようって。『TOKYO VOICE』を読んで明日も頑張ろうって思ってもらえたらいいなぁと思っていますね。それが『TOKYO VOICE』の狙いです。今後もずっと。

“モノの歴史よりも人の歴史の方が素敵だと思う”

— その裏表紙大好きで保存しています(笑)

森口:ありがとう(笑)、これ評判いいんですよ!僕はモノの歴史よりも人の歴史の方が素敵だと思うんですよね。リアルじゃないですか。出てくれている人も、10年経ったら「恥ずかしいこと言ってたなぁ」とか色々思うかもしれないけど、「今」彼らが真剣に考えていることは伝わっているはずなので。2017年なり、2018年なり、今を生きる人の声が、未来に伝わったら、面白いと思うんです。未来を創るのは、人ですからね。

— 紙面でリアルな声を届けることで読者の認識や行動が変わることもあるかもしれないですね。

森口:『TOKYO VOICE』は、インタビューがベースです。人の話す声ってリアル。そのとき、その瞬間に思ったことが、声になり、言葉になる、そこには、すごく真実があって、それが大事だと僕は思っています。人の心を動かすのは、人の言葉や声です。だから『TOKYO VOICE』を読んで、心が動く読者が現れるのは、当然のことであり、同時にすごく嬉しいことです。それこそが「人の声で、明日は変わる。」です。

“学生もプロもアイディアは同じだから”

— 学生フリーペーパー制作者にメッセージがあればお願いしたいです。

森口:こういうの(『TOKYO VOICE』)を見ると悔しいでしょって(笑)。悔しがって頑張れ〜。学生もプロも、アイディアは同じ土俵だから、みんなにもできるはず。どこにモチベーションを持って情熱を費やすか。お互いに切磋琢磨すればいいんだから。もっと学生の皆さんがすごいもの作れば僕らは素直にリスペクトするし、僕らも、今、若い世代から教えてもらっていますから。「世にまだないもの」を創ってください。
あとは、情報を伝えるんじゃなくて企画を伝える方がいいね。面白いと思った企画をどうやって世の中に投げたら、世の中がざわついたりワクワクしてくれたり面白いって思ってくれたりするのか、っていうのをみんなで議論して、それが形になってくるといいよね。情報をまとめるのが紙の仕事だって思わない方がいいんじゃないかな。デザインとかテクニックはどうでもいいから。情熱はちゃんと伝わるから。情報を「整理」しただけのフリーペーパーだと、つまらない。何を世の中に投げたいかを考える。企画が大事です。僕らにできない企画ができる可能性が、みんなにはあるはずだから。

http://tokyo-voice.jp/

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